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コラム

Googleに学ぶ「読まれるマニュアル」の作り方

検索され、更新され、使われ続ける社内マニュアルとは

「マニュアルを作ったのに誰も読まない。」

多くの企業で聞かれる悩みです。時間をかけて作成したはずなのに、気づけば古い情報のまま放置され、新入社員からは「結局、誰に聞けばいいですか」と質問される。そんな経験をしたことがある担当者も少なくないでしょう。

一方で、世界的企業であるGoogleは、組織が成長しても知識が埋もれない仕組みづくりを重視してきました。
もちろん、Googleの社内マニュアルがすべて公開されているわけではありません。しかし、Googleが公開している技術書やSRE(Site Reliability Engineering)の資料を見ると、「知識を共有し、誰もが必要な情報にたどり着ける状態」を重要な価値観としていることがわかります。

マニュアルは、読むために作るものではありません。使われるために作るものです。
Googleの考え方から見えてくる、「読まれるマニュアル」の条件を探ってみましょう。

情報は「持つ」より「共有する」もの

組織には、経験豊富な社員だからこそ知っているノウハウがあります。
しかし、その知識が個人の頭の中だけにある状態では、異動や退職が起きた瞬間に失われてしまいます。

Googleが公開している『Software Engineering at Google』では、「組織はインターネット上の誰かよりも、自分たちの課題を理解しているはずだ」と述べられています。そして、その知識を組織全体へ広げる仕組みの重要性が語られています。

つまり、知識は一部の人が独占するものではなく、組織全体の資産として共有されるべきものなのです。
マニュアルの本当の役割も、作業手順を並べることではありません。

「知っている人しかできない仕事」をなくし、「誰でも再現できる状態」をつくることにあります。

読まれるマニュアルは「検索できる」

マニュアルが読まれない理由として多いのが、「見つからない」という問題です。
フォルダの奥深くに保存されていたり、ファイル名が分かりにくかったりすると、人は探すことを諦めてしまいます。

Googleは検索エンジンの会社です。
だからこそ、「必要な情報に素早くたどり着けること」の価値を誰よりも理解しています。
実際にGoogle Workspaceでは、権限に応じて複数の情報を横断検索できるCloud Searchなどの仕組みが提供されています。

重要なのは、高度なシステムを導入することではありません。「どの言葉で検索されるか」を意識したタイトルにすることです。

たとえば、「〇〇業務について」ではなく、「請求書発行手順」「クレーム対応フロー」といった具体的な名称にするだけでも、必要な人が情報を見つけやすくなります。読まれるマニュアルは、まず見つけてもらえるマニュアルなのです。

完璧を目指さず、更新し続ける

多くの企業では、「完成してから公開しよう」と考えがちです。しかし、現場の業務は日々変化しています。
完璧なマニュアルを作ろうとしているうちに、内容そのものが古くなってしまうことも珍しくありません。

GoogleのSRE文化では、障害やトラブルが発生した後に「ポストモーテム」と呼ばれる振り返りを行い、その学びを組織全体で共有しています。

大切なのは、失敗を隠すことではなく、そこから得た知見を次に活かすことです。マニュアルも同じです。
実際に使ってみて、「ここが分かりにくかった」「この手順は変わった」という声が出たら更新する。

改善を前提に運用することで、マニュアルは少しずつ現場に合ったものへ育っていきます。
最初から100点を目指す必要はありません。60点でも公開し、70点、80点へと磨き続ける姿勢のほうが、結果として価値のあるマニュアルになります。

マニュアルは「質問を減らす道具」ではない

何でも「マニュアルを見てください。」そんな言葉を耳にすることがあります。
しかし、本来のマニュアルは、人とのコミュニケーションをなくすためのものではありません。

Googleが知識共有の文化で重視しているのは、質問しやすい環境づくりです。
分からないことを聞ける空気があり、答えを記録し、次の誰かの役に立てる。

その積み重ねが組織の知識になります。マニュアルは、人を黙らせるためのものではなく、人を育てるためのものです。
質問から生まれた答えを記録し続けることで、マニュアルは現場に寄り添った存在になっていきます。

読まれるマニュアルは「知識の入口」

マニュアルというと、堅苦しく、読むのが面倒な資料を思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかし、Googleが大切にしている知識共有の考え方から見えてくるのは、少し違った姿です。

「必要なときに見つけられること。誰もが更新に参加できること。」
「失敗から学び続けること。そして、組織の知識を一人のものにしないこと。」

読まれるマニュアルとは、完成された分厚い手順書ではありません。
「困ったときに最初に開く場所」であり、「次の誰かを助けるための知識の入口」です。

人が増えても、業務が変わっても、組織の力を落とさない企業ほど、こうした仕組みを大切にしています。
マニュアル作成に悩んでいるなら、まずは“読ませること”ではなく、“使いたくなること”を目指してみてはいかがでしょうか。

照輝小林

著者

小林照輝

silulu初代代表取締役として創業期を牽引し、ブランド立ち上げ時のデザイン設計からメインディレクションまでを担当。クリエイティブとマーケティングを融合させた戦略設計を得意とし、現在もISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の情報セキュリティ責任者として組織運営に携わっています。 AI戦略マーケティング会社「株式会社リースエンタープライズ」代表取締役として、SEO・AIO・Webブランディング・システム開発など幅広い領域を手掛けます。

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